【完結】遺族の強い希望により
生まれ育った土地、文化の違いが互いの価値観にどれだけの差を生んでいるのかを、少女の方が男よりもよく理解していた。

もしも立場が逆で、男の方が彼女の国へ留学に来ていたのならばそうではなかったかもしれない。

異国の地へ1人踏み入れた彼女は、最初から最後まで、この価値観のずれを至る所で痛感していた。
それこそ朝起きてから、挨拶ひとつ、食事ひとつ取っても、ただ毎日学校へ向かう道すがら歩いているだけの時でさえも。


もしもこどもが出来たらと、夢物語のようなことを男は考える。
同じことを彼女も考えた。
愛した男の分身をこの身体に宿したいと望んだ。

けれど、彼女だけは気付いていた。
同じことを望んでいながら、2人が考える未来は全く異なるものであることに。
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