【完】山崎さんちのすすむくん
長い夜



元治元年 五月二十八日






梅雨に入って数日。霧雨が降り続き、一歩ずつ季節は夏へと近付いている。


盆地にある京の町では既に気温が高くなりつつあり、加えてこの湿気。鬱陶しいことこの上ない。


もう一つ、俺を更に憂鬱にさせるのが、監察方全員が町で情報を集めるようになってから屯所内で発生した大きな問題。


脱走。


今日もまた一人逃げだした。


どうやら武田に追いかけ回されていた馬越くんがそれに耐えかね、副長許可で郷里に帰ったことが引き金となったらしい。


同じような気弱な連中が一気に逃げた。


人数の多さから、恐らく稽古や隊務に不満があった奴等もこれ好機と便乗したようだ。


無論、そのような軟弱な輩は必要なく、見つけ次第粛清なのだが。


しかしながら今はこの不穏な空気の中、人手が減ったことが俺達新選組にとって大きな不安要素であるのもまた、曲げようのない事実なのである。



< 166 / 496 >

この作品をシェア

pagetop