もしも私が―。
 そうこうしている内に、お葬式が終わった私は一人、お母さんとお姉ちゃんの遺骨を胸に抱いて、心を少しだけ静めて、胸に誓いを立てた。
 もう気持ちは落ち着いた、決意は固まった。あの頃のような、戸惑いも拒絶も、恐れもない。

(私、絶対にあの化け物捕まえる!お母さんとお姉ちゃんのためにも絶対に!)



 それから丸一日たって久しぶりに学校へ行った。

「おはよう」

 私があいさつをすると、いつもとは違う反応が返ってきた。

「立花さん!大丈夫?」とか

「辛いかもだけど、頑張ってね!」とか、先生まで

「おーい!立花、大丈夫か?辛い時はいつでも、先生に言うんだぞ!いいな?」とか。

 しょせん、上辺だけの優しさ。私のことなんて、本気で心配なんてしてないくせに! 何て思っちゃうのは、私がイケナイのかな、やっぱ。

 帰りまで
「大丈夫?」だの「辛くない?」だの、質問攻めより辛かったなぁ……。
 そんな事を考えていると、あの、廃工場が目に入った。
 
 化物を捕まえるってことは、あそこにまだ有力な情報があるかも知れない。
 何度もそう思ったけど、やっぱりあそこには今まで近づけないでいる。

 だって、全てが狂ってしまった場所だから……それに、まだ迷いがある。
 あれは本当に、現実だったのか……矛盾してるよね、化物を捕まえるって決めたのに……。
 
 本当はあれが、ただの夢であって欲しいとどこかで願ってる私がいる。
 実際あの夢から化物の夢は見ていないし……あ!もしかしたらあの夢の化物は、夢での擬人化ってやつじゃないかな?

 本当は犯人はちゃんと人間で、その凶悪犯が夢では化物にデフォルメされてるの!
 ……でも、人間にあんなこと出来る?人間が人間を食べれる?

 ……う、考えたら気持ち悪っ!
 でも、実際、人間が牙の後を残して人を殺すなんて出来ないんじゃ……いや、機械を使えば何とか……。
 
 ああ!もう、ウジウジウジ!
 確かに、私はこの目で見たんじゃん!
 
 お兄さんが化物になるところを!
 いいかげん覚悟を決めろ!
 化物は世の中に存在しちゃってるんだ!

 そんな事を考えながら歩いていたら、いつの間にか家に着いていた。
 ため息をつきながら、部屋に入り、鞄を放り出してベットに横になった。

 そのまま目を瞑ると、ウトウトして、いつしか眠ってしまった。
 また、あの時のような暗い闇の中にいると光が射してきた。

(同じだ)

 私は意気込んで、光の方へと歩いていった。

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