最後の恋愛Ⅱ
第2章 「秘密の会議室」
午後2時を過ぎる頃、突如オフィスに声が響いた。

「あ、所長お疲れ様です~」

私は弾かれるようにパソコンからバッと顔を上げる。

そこには、トランクを引いたスーツ姿の大麦がいる。

背がスラリと高くて、角ばった指

それから薄ら微笑む唇・・・

ぐあ・・・

と、頬に熱が甦る

思い出すな~私っ!

ごほんと咳払いしてパソコンに視線を戻す。

カチャカチャとキーボードを叩きながら、午後に使うはずの会議資料の着手を進める。

前もって、大麦と一緒に行っていた部下の柊からメールで送られてきた資料は、きっと大麦のチェックが入ってる。

悔しいけど、完璧だったもんな・・・。

「ただいま、森さん」

ぎくり、と身体がこわばるのを感じる。

この声は大麦の声

顔を上げればそこに奴がいるんだろうと思うと、なお更顔を上げられない。

「お疲れ様です。資料、もうすぐできるんで、もう少し待っていてくださいね。日下部さん、所長にお茶入れてあげて。」

日下部玲子、我が直属の部下である20代前半の女子社員がは~いと黄色い声を上げる。
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