初恋も二度目なら
アレのない異性の親友
「は?部長、何言ってるんですか」
「何なら今からうち来るか」
「な・・・そんなっ!私たちはもう、おつき合いしてない間柄なんですよ?」
「だが自分が思ったことを言い合える友だちだろ?」
「そ、それは・・・。わた、わたしっ!今から部長のお宅へなんて、お邪魔できませんっ!」
「なぜだ」
「行きたくないから!」

あ・・・言っちゃった・・・!

言った後だったけど、慌てて両手で口を塞いだ私に、意外にも部長はニヤッと笑ってくれた。

「そうか。じゃ、今度な」
「だ、だから・・・」
「これはマジで。つき合うとかそういうの関係なし。とにかく、一度くらいうちに来い」
「どうして・・・?」
「・・・小夜(さや)とは長く、本音でつき合っていきたいから」
「それは・・・友だち、としてですよね?」
「ああ。俺、親友って呼べるヤツ、一人しかいねえからさ。欲しいんだよな、そういう風に呼べて、裸のつき合いできるようなヤツが」
「裸って!」
「物の例えだ。うろたえんな、どアホ」
「あぁ・・・」
「何ホッとしてんだよ」
「ぎゃっ!髪っ!やめてください、ぶちょーっ!」

『これがしたい、したくない。あれは好き、嫌い。それはこう思う、思わない。とにかく、自分が思ったことを言い合える友だちだ』

・・・私も、そういうおつき合いができる友だちが・・・欲しい。
そんな「親友」が部長なら、私は・・・。

「部長?」
「なんだ」
「今度、部長のおうちにお邪魔させてください」
「・・・ああ」

そのときの私は、たとえ一時期おつき合いしていた間柄でも、男と女の・・“アレ”のない、純粋にプラトニックな親友関係は成り立つんだと、本気で考えていた。
そして、部長もそう考えてるんだと思っていた。

信じていた。
部長の思いを。
そして・・・私の気持ちを。


< 74 / 256 >

この作品をシェア

pagetop