空と君との間には
プロローグ
「麻生、人事異動だ」

広報部長から手渡された書類に、紗世は「えーーーっ」と、思い切り声をあげた。

つい1時間前。

広報の出先、先方との商談をまとめ直帰願いのメールを送信した麻生紗世(あそうさよ)

折り返し広報部部長「今田文雄(こいまだふみお)」から、紗世に返信があった。

――麻生、悪いが帰社してくれ。伝えたいことがある

短いメールだった。


「何なのよ、今日は愛里と女子会だったのに……」

紗世はポツリ愚痴を溢して、平田愛里こと同期で総務部の愛里にメールする。


――愛理(あいり)、ごめん。残業入っちゃった
近いうち、埋め合わせするから
ホント、ごめん


折り返し愛里が「わかった、残業なら仕方ないよ。連絡待ってるね」とメールをよこす。

紗世は急ぎ電車で帰社し、不機嫌そうな顔に笑顔を貼り付け「只今もどりました」とドアを開ける。

< 1 / 312 >

この作品をシェア

pagetop