私だけの魔法の手。
2


***



仕事の繁忙期に入って、残業が続く毎日。
営業事務として、仕事の補佐に付いている私は、担当の営業マンが優秀すぎて、とにかく仕事量がハンパじゃなくて。


周りの席の子達が申し訳なさそうにして帰っていくのに笑顔で返したのは、一体全体、何時間前の事なんだろう。




疲れたぁ、とか独り言を言いながら駅に向かう途中、あの美容院の前を通るのが最近のお気に入りだった。
コンクリートとビルに囲まれたこの場所で、お店も終わった時間、控え目なライトアップが、建物の木のぬくもりを感じさせてくれてちょっとした癒しになる。




それと、新人の男の子が毎晩居残りで練習をしていて、ちょうど通りからは顔が見えないんだけど、なんだかすごく元気になれる。
不思議なもので、まだこんな時間に頑張ってる子もいるんだ、って明日への活力になったりするのだ。



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