本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
偶然の再会
付き合いが再開し始めた頃は嬉しさと同じくらい戸惑いや不安があった。
だがそれも月日と共に薄れ今では彼の彼女でいられることを心から幸せだと感じている。
充実という言葉が今の私にはピッタリだと思える。
といってもお互い社会人で仕事もしているから会えるのはほとんどが週末。
学生の頃の様に毎日会える訳ではない事を考えると、あの頃はよかったなと思う。
でもその分行動範囲は広くなった。
何てったって交通手段が車なんだから行きたいところに2人だけで誰にも邪魔されずに目的地に
行けるなんて高校生の頃には考えられなかった。

3ヶ月が過ぎた頃だった。
お気に入りのマグカップが割れてしまったので新しいものを購入しようと最近できた大型ショッピングモールに来ていた。
「同じものがあればいいけど」
無駄にでかいこのショッピングモール、フロアガイドとにらめっこしながら目的の雑貨屋の位置を確認する。
私より少し早く場所を見つけた恵は、そりゃ~勝ち誇った様な顔で私の手を引きながら半歩前を歩いてる。
目的の雑貨屋に着くと私はすぐさまマグカップを探した。
「あっ!あった。恵あったよ!同じマグカップ」
デザインはシンプルだけれど口が当たる厚みが私にはちょうど良かった。
うれしくて恵にマグカップを見せると、私の選んだマグカップの隣にあった色違いのものを取った。
「2つ買ったらペアになるよ。このマグカップ俺の部屋に置いておかない?」
「うん」
こんな普通のことが私にはとても幸せなのだ。
恵は私の持っていたマグカップを取り上げるとそのままレジに向かった。
「恵!私が買うよ」
財布を取り出す恵を止めようとするが恵は目だけで俺が払うと言った。
全くさらっとこういうことするんだから・・・
「ありがとう」
店を出てすぐにお礼を言うと耳元に顔を寄せた。
「このお礼は高いからね。今夜が楽しみだな?」
恵の言葉の意味がわかるだけにどう言葉を返したらいいのかわかる。
面白がっているのか恵はそんな私をみてクスクス笑った。
「本当にいじめがいがあるよ」
くすくす笑いながら恵が手を差し出す。
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