最後の恋にしたいから
課長と急接近
「おはようございます」

いつもの様に出社をすると、一課では名越課長が朝から忙しそうに、営業さんたちと打ち合わせをしている姿が目に入った。

三課の私は島が離れているし、オフィスに響き渡るほどの挨拶をしているわけではない。

さすがに気付いていないようで、それが寂しいようなホッとしたような複雑な気持ちだった。

「おはよ、奈々子。あれ? 何かあったの? 目の下にクマ……」

さすが、彩乃も鋭い。

私に向けた笑顔は、みるみる内に消えていった。

始業までは、まだ少し時間がある。

それなら話してもいいかと思い、ゆうべのことを話したのだった。

もちろん、名越課長のことは秘密で……。

すると、聞き終えた彩乃の顔が、険しくなっていった。

「マジで? 寿人くんサイテー。私も、そんなに会ったことはないけど、全然悪い人に見えなかったのに……」

気持ちに同調してくれたことが嬉しくて、彼女に話したことでこちらも少し冷静になる。

「悪い人じゃなかったんだと思うの。でも、まるで今までの時間が全部否定された気がして……。だって、全然好きじゃなかったなんて言われんだよ? ただ、ちょっと思っちゃった。寿人も、ずっと我慢してたのかなって」

もちろん、それで気持ちが吹っ切れたわけじゃない。

ただ、眠れない頭で彼のことを考えていたら、そういう考えに辿り着いたのだった。
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