天翔ける君
知りたがりの鬼


千鬼の屋敷にやってきてから数日がたった。

最初の日以来、千鬼は恵都を食おうとしない。
食わないのか、と聞いてみても、もっと人間界のことをおしえろと言われるだけだ。

屋敷に来てからずっと、恵都は千鬼の質問に答える日々だった。



たった数日だが、恵都はこちらの世界のことを少しずつ知っていった。

まず、人間の住む世界とはいくつかある道のようなものをのぞいて隔絶していること。
こちらの世界は妖の住む世界だということ。

それから、恵都は外に出ることを禁止されているから実際に見たわけではないが、屋敷の外には町が広がっていること。

そして、町には多種多様な妖が暮らしていて、その中で千鬼が一番偉いらしいということ。


妖の世界だけではなく、多少は千鬼についても分かることがある。

恵都が最初に思った通り、やはり千鬼は夜行性だった。
それに、食事は人間と違いがない。
恵都を食うと言っておきながら、人間が主食というわけではないようだ。

それは千鬼に限ったことではなく、妖のほとんどがそうらしい。


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