夏のわすれもの
Prologue
その年の夏、俺こと藤堂伸一郎(トウドウシンイチロウ)は1人で海にきていた。

「全く、失恋なんてホントについてねーな」

そう言っても、返ってくるのは波の音だけだった。

俺の目の前にあるのは、青い海だけだった。

太陽の光で反射している水面は、まるで宝石のようである。

潮の香りがする風を鼻に感じながら、俺は砂浜を歩いていた。

だだっ広い砂浜には、俺1人だけである。

「――第3者から見たら、かわいそうなヤツだよな」

俺はため息混じりに呟いて、砂のうえに腰を下ろした。

昨日、3年間つきあっていた彼女と別れた。

簡単に言うならば、失恋である。

傷心旅行みたいな感じで出かけたものの、
「――傷口に塩を塗ってどうする?」

俺は呟いた。

1人で旅をしたその結果、虚しくなっただけだった。
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