私の横に居る人
16
バイトへ向かういつもの道のり。

「今日はあんまりしゃべらないんだね。何かあった?」

智樹先輩が私に聞く。

「いいえ、いつもと変わりませんよ。」

私は笑ったけど、顔が引きつっているかも。

響子先輩と別れた後、何だか智樹先輩の話を思い出しては、知らず知らずに不機嫌になっているみたい。

「具合でも悪いの?」

帰り際、麻帆にもそう聞かれた。

自分でも持て余し気味の心。

山本出版に着くと早々に校正を始めたけれど、全く集中が出来ない。

ついつい手が止まってしまう自分に、嫌気がさしてくる。

もう集中できないと感じて、予定していた分を少し残して、早目に帰宅した。

「悠ちゃん。」

健先輩が入口で待っていた。
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