ご近所さん的恋事情
駅にて
瑠璃子は駅のホームで、困っていた。目の前の男をどう撃退したらいいか悩んでいる。

知らない男ではない。会社の先輩である。会社でも数人しか知らないはずの女の一人暮らし情報がなぜかこの男の耳に入っていた。

何となく噂の出どころは想像出来ていた。あの子にだけは言うんじゃなかった…後悔しても遅い。


「ねえ、早く案内してよ。瑠璃子ちゃんちで飲み直そう」


今夜は新しい部長の歓迎会だった。一次会で帰ろうとした瑠璃子は腕を掴まれた。何度も何度も断ったというのに、ここまで着いてきてしまった。

ここから先には動けない。この男に自宅を教えるつもりは全くない。

しかし、全然引かない。どうしたら、帰ってくれる?どうしたら、帰らしてくれる?


「お願いですから、帰ってもらえませんか?家に来られても困りますので」


このセリフを言うのは何度目だろう。


「ちゃんと送ってあげるって、言ってるじゃん。ついでにちょっと見せてくれるだけでいいから」
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