嘘つきな背中に噛み痕をアゲル。
三、過去と未来と嘘つきな、
「ええ。入院!?」
幹太の言うとおり、うちに帰ると親が庭で蹲っていた。
草むしりの途中で、足が痛くなり立てなくなったらしい。
すぐにお父さんに迎えに来てもらって、病院へ行った。
悔しいけど晴哉の事故以来、幹太の車以外乗るのが怖くて、私は家で連絡を待っていた。
病院で入院して、二日後には手術らしい。
お父さんは今日は、病院で話を聞いたりして遅くなるらしい。
私は母の入院準備も終わり、幹太の帰りを待った。

空はまだ月も出ない、晴天。
うっすらと見える月の輪郭が、幹太のようだった。

お日様みたいに笑う晴哉の前では、輝かない月なんて輪郭しか見えない。朧げにしか。

私は、きっと言葉もくれない幹太の優しさを、輪郭だけしか気づかずに見逃してきたと思う。
それに気付いたのは、空が夜に包まれて、闇に落っこちて――太陽が隠れてしまったからだ。

「桔梗ちゃん、後は私が晴ちゃんを待っているからお仕事に戻りなさいな」

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