死にに行く。ナイフと馬人間と
馬人間との対話

馬の顔をした人間。


最初は驚き良く見たが、確かに顔は馬で身体は人間だった。


リアルな馬の顔だったが、最初は驚いたが直ぐに慣れた。


「死ぬのは構わないよな。充分生きたよ。四十二か。」


馬人間が喋る。


くぐもったような声で男なのか女なのか判断が出来なかったが、何処かで聞いたような気もした。


僕の年齢も当たっていた。


「そりゃ色々あるよな。死ぬのは構わないが謝ってくれよ。」



僕は、一体馬人間が何を謝って欲しいのかさっぱり分からずに聞いた。



「何を謝るんだ。謝る事が有りすぎて分からんよ。」



「あの時俺の頭を割っただろう。あの後俺は仕事を辞めさせられて三年後に病気でこの世から去ったんだよ。」



なんの事だが分からずに不思議な顔をすると、馬人間が、イライラしたような声を出した。


「さすが、その後もあちこちで暴力沙汰を起こしてるだけに思い出せないか?」



僕は、あ!っと思った。



あのタイ人だと気付いた。


そういう風に見れば、馬の顔の中に何かあのタイ人の面影があるような気がした。


馬の顔に人間の面影が等とおかしな事だが、死のうと思った時にあのタイ人との事を思い出したのも必然性があったのかも知れないと思った。


或いは、あのタイ人の事を思い出したから馬の顔にタイ人の面影を見いだしたのだろうか?




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