大阪セカンドシンデレラ
8、あべのハルカス



『お陰様で、あべのハルカス展望台は開業時より多くのお客様にご来場頂いております。当日券もございますが、混雑状況により入場までお時間を頂く場合がございますので、あらかじめ受付日時を指定出来る、日時指定券をご用意しております。是非御利用下さいませ。』



智君が入院前にゆかちゃんに託した白い封筒。


その中身はあべのハルカス展望台の日時指定券だった。



「智君…。」



指定券を眺めていると、カウンターの中に戻ってきたゆかちゃんが、たこ焼きに目を向けたまま話し始めた。



「お母さんに必死に頼んだってさ。あべのハルカスの指定券買って欲しいって。お金もネット予約も自分では自由に出来ないからさ。買って貰って、そのチケットを握りしめてここまで1人でやって来た。これがどうゆう意味だか分かるよな?」



「うん…。」



『一度昇ってみたいなぁ、あべのハルカス。』



以前智君が口にしていた言葉。


ホンマは智君だって昇りたいのに…。



『次、体調が悪くなったら、もう外へは出れないのだろうと。』



「自分が昇れないからって、私に託さなくてもいいのに…。」



「ん?何か言ったか?」



涙を拭きながら小さく呟く私の言葉にゆかちゃんが反応した。



「ううん、何にもない。」



「で、ハルカス展望台の日時は何時になってるんや?」



日時指定券の詳細を確認する。



「今週の日曜日、午前10時30分…。」



「美紀、もちろん行くんやろな?」


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