結婚の定義──君と僕を繋ぐもの──
心の扉を開くとき
家電売場でどのこたつにしようかと二人で選びながら、さっきのレナの反応が気になったユウは、レナの横顔をじっと見つめていた。

(この間まで結婚なんて考えたこともなかったのに、もしレナにそう言われたらヘコむと思うとか…。オレ、一体どうしたんだろう?!)

レナはユウの不安も知らず、こたつ布団の柄を選んでいる。

(レナがどう思ってるのか、気になる…。)

じっと見ているユウの視線に気付いたレナは、少し照れ臭そうに笑う。

「そんなにじっと見ないで…。」

「あ…。ごめん…。」

ほんの少しぎこちない空気が流れる。

(レナにヘンだと思われるな。気を付けないと…。あまり気にしないようにしよう。)

「レナはどれがいい?」

「これかな。」

「うん。部屋の雰囲気にも合いそう。」

「じゃあこれでいい?」

「うん。これにしよう。」

商品カードを取り、レジに向かおうとした時。

「あれっ?ユウと高梨じゃん!」

名前を呼ばれて振り返ると、高校時代にユウと一緒にバンドをやっていた岡田聡がいた。

「おおっ、サトシじゃん!久し振りだな!!」

「ホントにな!!オマエなんにも言わずに消えたから心配したんだぞ!!」

二人は久し振りの再会を喜び合う。

「高梨も、高校卒業以来だな。元気だった?」

「うん。」

レナとユウは、サトシの後ろにいる女性と子供に気付いて、会釈をする。

「うちの嫁さんと子供。」

「初めまして…。」

小さな赤ちゃんを乗せたベビーカーを押す女性はペコリと頭を下げた。

「ほら、オマエも挨拶しな。」

サトシが促すと、小さな女の子が頭を下げた。

「岡田結衣です。6才です。」

「ユイちゃんって言うんだ。こんにちは。ちゃんとご挨拶できてえらいね。」

レナは優しくその子の頭を撫でた。

ユイは、レナの顔をじーっと見つめる。

「お姉ちゃん、あのドレス着てたアリシアちゃん?」

こんな小さな子まで自分を知っていることにレナは驚いて目を丸くした。

「うん。そうだよ。」

「じゃあ、アリシアちゃんはこのお兄ちゃんのお嫁さんなの?」

「えっ…。」

思いがけない言葉にレナは絶句した。

「こら、ユイ。スミマセン、この子ったら…。」

奥さんが慌ててユイを止める。

「あ、いえ…。」

レナがしどろもどろになるのを見て、ユウはまた少し不安になる。

「あの…私、ちょっとレジ済ませて来るね。」

「あ、うん。」

ユウは慌ててその場を離れるレナの後ろ姿を見送りながら、小さくため息をついた。



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