新婚の定義──嘘つきな君と僕──
知らない過去
テレビ局に到着すると、レナはマネージャーから関係者のパスを受け取り首に下げた。

レナはメンバーとマネージャーと共に楽屋入りし、スタジオでのリハーサルを見学した。

(私の知らない世界…。)

たくさんのスタッフが行き来する中で、レナはマネージャーの後ろに付いて、静かにユウを見ていた。

(ユウって…芸能人なんだな…。)

リハーサルを終え一度楽屋に戻り、しばらくすると本番が始まる。

レナはスタジオのそでの目立たない場所で、マネージャーと一緒にその様子を見守った。

大勢の人気アイドルやミュージシャン、話題のバンドなどで賑わうスタジオは、とても華やかで、まるでテレビを見ているようだった。

(私の夫がいるのはこういう世界なんだ…。)

`ALISON´の出番になり、たくさんの声援を受けながらステージに立ってギターを弾くユウの姿を見つめていると、レナは、いつも一緒に暮らしているユウが、自分とは無縁の華やかな場所にいることが、少し不思議なような、遠く感じて寂しいような気持ちになった。

今朝ベッドで、不安そうにレナを抱きしめ、ずっとこうしていたいと何度もキスを交わしていた人とは別人のように、ユウはステージの上で眩しいくらいに存在感を放つ。

(あんなユウは私だけが知ってるんだな…。)

他の誰も知らないユウは、自分だけのユウなんだと思うと少し嬉しいような、ユウの特別な存在であることが誇らしいような気がした。

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