咲かない花
9 (最終話)
「・・・何」
「ステーキ食べる?美味いよ」
「ううん。おなかいっぱいだからいらない」

あれから、二宮くんの運転で通りがかりのファミレスへ行き、今私たちは晩ごはんを食べてるところだ。
「美味い」と言ったとおり、超ご機嫌な二宮くんは、ニコニコ笑顔でおいしそうにステーキを食べている。
やっぱり若い男性で、二宮くんの場合はスポーツしてるからなのか、食欲旺盛だ。
彼の食べっぷりは豪快だけど、下品じゃないから、見てて微笑ましいというか。
「幸せ」みたいな、ほんわかした気持ちが、私の胸に広がっていくのを感じる。

・・・だから私は、チキングラタン半分でおなかいっぱいになったのかな。
ううん。
図書室の空き部屋でキスされただけで・・・もう、おなかいっぱい。

つい1時間ほど前の、ドラマチックな出来事(キス)を思い出してしまった私は、咄嗟にうつむいた。
私にキスした向かいに座る彼に、赤くなってしまったであろう顔を、見られないように。


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