イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
12、私の油断と偏見 ー 桜子side
時刻は午前零時過ぎ。

夕飯はいつも通りバランス良く食べた。

お風呂は昨日の失態が頭を過って、シャワーで我慢した。

夜寝る前のお楽しみの読書はいつもならシンデレラストーリー系の小説を読んで浸りたいところだが、今日はオスカー・ワイルドの『サロメ』にした。妖艶な美女で我が儘なサロメがなんとなくお姉ちゃんに似ていたからだ。

サロメが自分に靡かなかったヨカナーンの生首を持ち上げてキスをしようとする有名なビアズリーの挿絵を見ていると身体がゾクッとしてくる。

「……本の選択誤ったかも。ワイルド読むなら『幸福な王子』にしておけば良かった」

ビアズリーの挿絵がおどろおどろしくて、とてもじゃないけど今夜は安眠出来ないような気がする。

そんな事を本の表紙をじっと見つめながら考えていると、突然背後から肩を軽くトンと叩かれた。
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