恋の魔法と甘い罠
募る想い
「じゃあ、俺はここで」



あたしにちらりと視線を向けながらそう言って背を向けた慎也さんは、そのまますたすたと歩いていったけれど、和泉さんとすれ違ったときに二人は何か言葉を交わしていた。


相変わらず慎也さんは苦笑していて、和泉さんは眉を寄せている。


そんな二人の姿を見ると、上司と部下、という感じがしない。


どちらかというと、友達みたいで。


なんだか不思議な感じがした。


だからか、今どんな言葉を交わしたのかちょっと気になってしまった。



そしてそのまま歩き去っていった慎也さんの背中が見えなくなる頃、ちょうど和泉さんがあたしの元にやってきた。


目の前で足を止めたと思ったら、わざとらしいくらいの大きな溜め息を吐く。



「何でこんなところにいるんだよ」


「え」


「別館だろ、ここ」
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