恋のはじまりは曖昧で
ガールズトークで

「高瀬さん、次の営業会議の時に使う資料、任せてもいいかな?」

「はい」

「要件を箇条書きにしてるだけだから申し訳ないんだけど、これを上手くまとめて欲しいんだ」

田中主任から渡された数枚の紙を捲る。
箇条書きにしてるだけと言うけど、すごく分かりやすい補足説明も書いてある。
相変わらず田中主任は綺麗な字だし。
要件を上手くまとめる……これなら私でも出来ると思う。

「はい、分かりました」

「じゃ、よろしく」

早速、パソコンを起動させ、どう文章化していくか考える。
入力しては読み返し、おかしい部分はないか何度も確認する。
出来上がった文章を保存したあとプリントアウトし、それを田中主任の元へ持って行った。

「主任、チェックお願いします」

「お、もう出来た?」

主任に渡すと、資料にザッと目を通していき、視線を私の方に向けてくる。

「ありがとう。またちゃんとチェックしとく」

その一言に軽く頭を下げ、自分の席へ戻った。

要らなくなった書類をシュレッダーにかけていたら、紙の束を手にした浅村くんがわざとらしく咳払いをしながら近寄ってきた。
あえて知らん顔をしていたら、ツンツンと肩をつついてきた。

「高瀬さん、お願いがあるんだけど……」

浅村くんは普段私のことを“さん付け”では呼ばないのに、頼み事がある時だけこんな風に下手に出る。
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