天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
海を越えていけ
捜索所で貰った紙を、ポケットから取り出した僕は、大きくため息をついた。

「アアア…地図…渡されても、旅費がないんだよなあ〜」

地図とともに、カードを取り出し、残高をチェックするけど、

船を乗るにも、飛ぶ乗り物を召還するにも、ポイントが足りない。

「はあ〜」

深々とため息が、何度も出る。


すると突然、後ろから怒鳴られた。

「コラ!新入り!手を休めるな!」

振り返ると、怖い顔をした掃除のおばさんがいた。

「手を休めるな!さっさとしろ」

「は、はい…」

僕は紙をポケットにしまうと、慌てて雑巾で窓を拭き始めた。

僕の拭き方を見て、厳しい声が飛ぶ。

「何だい!この雑な拭き方は!拭き掃除も、出来ないのかい」

おばさんは、僕を押しのけると、僕が拭いた後の窓をもう一度、拭き直す。

「こうやるんだよ!まったく…今の若いもんは、窓もろくに拭けないのかい!」

端から丁寧に、むらなく拭くおばさんに、僕は感心した。


今、僕は…海を渡る為のポイント稼ぐ為、短期バイトに明け暮れる日々を過ごしていた。

実世界でも、バイトなんてしたことがないのに。

地図を渡されてから、1ヶ月。

僕はまだ…最初の街を動けずにいた。
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