恋のはじまりは曖昧で
思わぬ頼まれ事で

カラオケ大会も終わり、ビンゴゲームに突入した。

「これからビンゴゲームを始めます。入口のところで渡されたビンゴカードを用意してください。真ん中のFreeのところは開けておいてください」

司会が佐藤さんたちから総務の女性二人にバトンタッチしている。
二人の女性の司会者たちは余計なことは話さず、スムーズに進行していく。

「それと社員旅行中ということで荷物が増えてしまうことを考えて、今日は景品のお渡しは出来ません。引換券を渡すので、当たった人はまた後日総務の久保まで持ってきてください。その引換券はなくしたら無効になりますのでちゃんと保管しといてくださいね。引き渡しの期間は来週の月曜から一週間とさせていただきます。来られなかった場合、その景品は会社で使わせてもらいますので悪しからず」

「では、始めます」

ガラガラと手動式のビンゴゲーム機を回し、数字がコールされる。

「最初は十二です。どうですか、開きましたか?」

「それではどんどん進めていきますね。はい、次は五です」

「俺、リーチ!」

何回目かの数字が読み上げられた時、目の前の浅村くんが手をあげて叫んだ。

「今、リーチの人は手をあげてみてください」

総務の人の声に、五、六人が挙手をする。
結構いるんだ。
私なんてまだ一個しか開いてないのに。
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