君を好きな理由
どうしてこうなった?
*****




それがいつの間にか、医務室に居座るようになったのか。

「だからあんた達。ここは憩いの場所でもいちゃつく場所でもないんだったら」

昼間の医務室は休憩室に早変わりするようになった。

冷たい視線を送っても、まず慣れてる華子は気にしない。

華子が気にしないからか磯村さんも……いや、彼は自分のしたいようにするだけの様だから、何を言っても無意味だろう。

それに加えて秘書課の葛西さん。

「良いじゃないですか。水瀬さんも昼休憩でしょう?」

だいぶ慣れてきましたね。貴方は。

「貴方が一番部外者なんだけど」

「部外者ではありません。貴女の事を好きだと申し上げました」


……ええ、そうね。

社員入口で待ち伏せして、人の手を握りしめがら“告白”されたわね。

もう、通りすぎる社員達がたちどまるくらい大きな声で。


「その場でお断り致しましたが、覚えていらっしゃいませんか?」

「都合が悪そうなので、忘れる事にしました」

無表情で返されて、眼鏡を直す姿に溜め息をついた。

眼鏡をかけるようになった葛西さん。
何の心境の変化があったのか、この男は私を“好きだ”と言う。



正直ね、いい条件だと思うのよ。

何て言っても秘書課でしょう?

会社の中でも、秘書課の人はエリート揃いよ。
まぁ、役員のあれやこれやを補佐する訳だから、ぺーぺーではどうにもならないでしょうし、自然とそうなるのは解る。

それに、葛西さんは現在社長の息子だし、狙い定める女子社員はたくさんいるわ。

実際、医務室にのりこんできた子もいたし。

でもね……


「水瀬さん。明日、映画でもいかがですか?」

「残念。見たいと思う映画はないわ」

「では。K美術館で古代エジプト展がやっていますので、そちらはいかがですか?」

「エジプトに興味はないの」

「では、美味しいおでん屋を見つけましたので、食事に行きましょう」

「おで……」

おでんは好物よ。

好物だけどね。

「おでんは冬に食べたいです」

「では、美味しい芋焼酎を出す店を見つけましたので行きましょう」

今回は随分と食い下がってくる。

しかも、珍しく私の好きそうなモノをチョイスするように……


こそっと華子が磯村さんを見て、磯村さんがニヤリとしたのが見えた。

なるほど、あの男は変な入れ知恵をしたわね。

それなら……


「ちゃんと自分で考えて、誘ってくれてます? 私、誰かに立てて貰ったデートプランには乗りませんよ?」

「失礼ですね。ちゃんと美味しい芋焼酎かリサーチしましたよ」

うわ。まじか。
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