まだ、心の準備できてません!
◆無愛想美女の告白

そのまま帰ろうとしたものの、講習でもらったラッピングの材料を会議室に忘れてきたことに気付いた。

まだ仕事があるという浅野さんと別れ、一人会議室に戻り、ガチャリとドアを開ける。


「あ、三木さん……!」


そこにはまだ三木さんが残っていた。私が座っていた席の向かい側に腰を下ろしている彼女は、私を見ても特に驚いた様子はない。

というか、さっき一瞬見たのと同じ、無表情で私を見据えている。やっぱり何か様子が違うよね……。

気になるけれど、とりあえず、私は笑顔で用件を言う。


「あ、あの、私忘れ物しちゃって」

「知ってます」


ぴしゃりと放たれた、これまで彼女からは聞いたことがない冷めた声に口をつぐむ。

へらりと笑っていた顔は、ピシッと音がするくらい固まった。


無表情を変えることなく、私から目線を移した彼女は、前方の席を指差す。

示された椅子には、私の忘れ物である資材が入った、トワルの紙袋が置かれていた。


「あ、ありがとう、ございます……!」


ぎこちない笑顔のまま、軽く頭を下げて席に回るけれど……

どうしちゃったの、三木さん!? 講習会の時とは別人のように愛想が悪いんですけど!

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