君と花を愛でながら
第四話 一途な向日葵 前編
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しとしとと雨が降り続く灰色の空の下、紫陽花の鮮やかな発色が心を少し晴れやかにしてくれる。


窓の外から見える花壇には、春先のパンジーが終わって以来まだ何も植えられておらず、水を含んだ黒い土から雑草が生え始めていた。



「マスター、次はここ、何か植えるんですか?」



ダスターでテーブル席を拭きながら、カウンターに向かって尋ねる。



「そうですね……秋になったらまた。パンジーか」

「チューリップもいいですよ」



スペースは結構あるから、両方植えるのもいいかもしれない。
どちらも種類豊富な花だから、きっと賑やかな花壇になる。


まだ植えてもいないのに、来年の花壇を想像して今からとても楽しみだった。


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