清掃員と経営者
隠密っぽい?

坂本との再会で楽しかったランチの後味が悪くなってしまった。

気持ちを切り替えて午後は清掃主任に挨拶をしなければならない。

清掃室に戻ると程無くしてかなえと一緒に猫背にメガネの男性が入ってきた。

「お疲れ様です、清掃主任の環です。職務を多数兼任しているので、皆さんと顔を合わせるのは週に2、3度かと思いますが宜しくお願いします。」


少し緊張してる様子で環が挨拶した。


主任…上司にしては腰の低そうな、頼りなさそうに感じる風体に瑠美は少しガッカリした。

縁の分厚いメガネ。まるで昭和のお父さんを彷彿させる。
自信なさげな出で立ちは目の前の部下達に興味が無いのか人前に出るのが苦手なのか。
前髪がメガネに掛かる程伸びていて、尚且つメガネが曇っている為その表情は殆ど確認出来ない。

観察する様にジーっと見ていたら環と曇ったメガネ越しに目が合う、いや合った気がした。
環の耳が赤くなるのを確認し、やはり目が合ったのだと瑠美は判った。

やはり新しい職場で新しい恋が始まるなんて現実にはあり得ないと環を見ながら小さく溜息を吐いた。

< 25 / 27 >

この作品をシェア

pagetop