君と花を愛でながら
第五話 一途な向日葵 後編
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第五話 一途な向日葵 後編
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梅雨が明けるとひと息に気温が上がり、急ぎ足で真夏がやってきたような感覚だ。
蝉の泣き声が余計に体感気温を上昇させている。


朝から既に汗を掻きつつ歩く店までの道中で、神社の参道に植えられた百日紅が鮮やかなピンク色の花を咲かせていた。


夏の花は発色の鮮やかなものが多い気がする。
店に先日からならんでいるミニ向日葵の鉢植えも、目に眩しい黄色の花をたくさん咲かせてくれている。


夏と言えば大きくて背が高い向日葵が浮かぶけれど、ミニサイズの向日葵もまた雰囲気が違って可愛らしい。


向日葵は太陽を追いかけて咲くという。
この子達も、小さいなりに太陽を追いかけるのだろうか。


店の外に並べて陽の光の下水やりをしながら、じっと花の角度を眺めてしまった。



「綾さん、そろそろオープンしましょうか」



扉が開いて、一瀬さんが顔を覗かせて声をかけてくれる。
「はぁい」と私が返事をしたのを確認すると、扉の真ん中にフックでかけられているプレートを『OPEN』にひっくり返してまた中へと戻って行った。


私はじょうろの中の水を空にして、今日も暑くなりそうな青空を見上げる。



「多分、もう見頃なんだろうな」



片山さんに誘われたまま、まだ返事をしていない向日葵畑。
きっと今が丁度見頃の時期だろう。


ちゃんと返事をしなきゃって思ってるのに、このところの私は他のことばかりに気を取られて、正直向日葵畑どころではなく……。


なんて、そんな風だと片山さんにも失礼だなってわかってるんだけど。

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