異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第38関門~……始まった。




一晩眠れなかったあたしだけど、バルドがずっと抱きしめて頭を撫で続けてくれたお陰か、明け方にちょっとだけ眠れた。


バルドは朝早くから公務が入っているのに、あたしのわがままに付き合わせて本当に申し訳ないと思う。


だけど、バルドから離れるのが怖くて恐ろしくて。彼にしがみつき続けた。


このままだと、自分が自分でない存在(もの)になってしまう気がして。


こんなにも言い様のない強い不安と予感に、恐怖と不安で体の震えが止まらない。


あたしはずっと怖い、を繰り返していた。その度にバルドはあたしの名前を呼んでくれる。下手な慰めよりもそれは効果があって、ゆっくりと気持ちが落ち着いてゆく。


時折寝入りつつやっといつもの自分を取り戻せたのは、朝食の時間を余裕で過ぎてからだった。


「ご、ごめんなさい! バルド……こんなに時間を取らせてしまって」


時計を見てからハッと我に返り、慌ててバルドから離れた。だけど、彼は「気にするな」と言う。


「おまえがそうまでオレを頼るのは珍しい。よほど不安だったのだろう?」

「……そ、そうだけど」


今更ながら、自分がバルドにしっかり抱きついたという事実に気がついて。顔がめちゃくちゃ熱くなる。
いくら怖くても、ずっと彼に抱きしめられていたなんて。 は、恥ずかしすぎる……何てことをしてたんだろう、あたしは。


「もっと、わがままを言え。おまえは自分を抑えすぎる」

「え?」


バルドの言う意味がわからなくて顔を上げれば、彼はいつもの無表情で意外なことを口にした。


「もっと、オレに甘えろ。おまえのわがまま程度で潰れる人間ではないつもりだ」

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