私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
◇第8章:都会男と取材へ行く
 瞼を開けるとカーテンから朝陽が差し込んでいて、目を細めながら起き上がり、両腕を上に伸ばして身体に起きろとスイッチを入れる。

「あ~、よく寝た」

 姫川編集長から早めに帰るようにと言われ、久しぶりにゆっくりと身体を休ませることが出来たなぁ。

 ベットから降りて、服に着替え、パンを焼いて簡単な朝食を取りながら、今日の仕事のことを考える。

 出勤したら先ず、途中までしか出来なかった校正の続きからやって、姫川編集長にチェックをしてもらったら青木印刷に『Focus』の入稿の手続きをして、次は季刊の取材したい場所を絞って…、次から次へとやらなければいけないものがあるから、今日も効率よく進めないと。

 頭の中で手順を覚えてるとどこかでこぼしそうになるから、メモに書いておこうっと。

「そろそろ行かなくちゃ」

 部屋を出て駅に向かうと、駅のホームは電車を待つ通勤客の行列でいっぱいで、いざ電車に乗り込んだら私の周りは背の高い男の人がいて、かなり圧迫感を感じて息苦しいし、こんな時は身長が少し高いといいなってつくづく思う。

 藍山駅に降りた時は体力を消耗していて、せっかく昨日早く帰れたのにって心の中で残念がりながら歩き、四つ葉出版社のビルに入ると、ロビーで高坂専務と秘書の男性に会った。

「高坂専務、おはようございます」
「おはよう。季刊は順調?」
「これからですが、無事に発行できるように頑張ります」
「頼むよ。すっげー楽しみにしているから」

 あぁ…、その笑顔が素ではなくてプレッシャーをかける笑顔だというのが分かる。

「高坂専務、そろそろ面接の時間です」
「これから面接なんですか?」

 今って大学生の就活の時期ではないし、こんな中途半端な時期に面接なんて珍しいな。

「季刊が発売されるし、サポート的に総務課に人材を欲しくてさ。採用された時は仲良くしてあげてね」
「はい」

 高坂専務はそれじゃと手を振って秘書と一緒にエレベーターに乗り込んでいき、私も編集部へ行かなくちゃ。
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