私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
◆第9章:都会男と海男の関係
「先に海の家がある場所に向かうぞ」
「はい」

 数時間かけて宇ノ島の最寄り駅に着くと、先日もだったけど休日とあって電車から降りる人たちが多く、殆どは宇ノ島の観光が目的だろうな。

 私が取り上げたいと提案をした路地裏やその先にあるヨシハラのお爺さんの定食屋さんなども魅力的だし、この季刊でその場所を訪れる人たちが増えるように頑張って書こう!

「ぼさっとしてねぇで、行くぞ」
「待ってください」

 1人意気込む私を置いていくように姫川編集長は先を歩きはじめ、置いていかれないように駆け足で姫川編集長の元へ行き、隣を歩く。

 今日の天気は雲が1つも無い快晴で、浜辺を歩いていると磯の香りが鼻をかすめ、海にはサーファーたちが波を待ち構えている姿が見え、海の地域独特な雰囲気だ。

 海斗さんも今頃どこかの海の上で、漁をしているんだろうな。

 宇ノ島近辺の浜辺を歩き、やがて海の家が密集して建てられている所に着くと、海の家は木造の物や趣向を凝らして南国風な造り、あそこの海の家はテレビ局がスポンサーなのか、何処かでみたことのある豚のようなマークもある。

 靴の中に砂が入ったりしてもたつきながら歩いていると、海の家を建設している人たちがいて、木材を運んだり、頭にはちまきをしてペンキで壁を塗装している男性がいた。

「こんにちわ、電話した四つ葉出版社の姫川です」

 姫川編集長は塗装している男性に声をかけると、男性は振り返る。
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