in theクローゼット
第二章「告白はゴミ捨て場の裏で」
side-篠塚愛子
「へえ、稲葉の弟って双子なんだ。かわいい?」
「う、うーん。まあ、まだ小一だしな。生意気で騒がしいけど」
「結構年離れてるんだ。じゃあ可愛いね」
あれから一週間、実はインフルエンザだったらしい舞は学校を休んでいる。
いつも舞と一緒に帰っていた私は、毎日舞に明日の時間割とその日配られたプリントを届けに行く。
誰もいない放課後の教室で稲葉とおしゃべりをした後で。
「篠塚は兄弟いないの?」
「うん。舞と一緒で一人っ子」
「ふ~ん…………あのあと、三笠とどうなった?」
「キスしようとしたのはバレなかったよ」
「それって、よかった?」
「そりゃあいいよ。まだ舞の側にいたいしね」
去年も稲葉と同じクラスだったけれど、まともに喋ったことはほとんどなかった。
小学校のころみたいに無闇やたらと敵視することもなかったけど、男子と女子の間には深い川が流れてるみたいだった。
異性に興味津々なのに実際には近づけなくて、よそよそしい。
このクラスは、そんなお年頃。
必要以上に異性と仲良くしない。
暗黙のルールとして存在するその隔たりが、いったいどんな感情によって生まれているのか。
私は知っている。
きっと稲葉も知っている。