恋人は魔王様
6.妄想と現実の狭間
そのとき、さぁっと、よからぬ風が吹いて例の執事が現れた。

たった半日でこの状況に慣れきった自分にちょっと苦笑する。

「お取り込み中のところすみません」

例によって例の如く、そこに跪きながら執事が言う。
さっきまでと違うのは、やたら緊迫した空気を身にまとっているあたりか。

別に取り込んでないもんっ
と、喚きたいところなんだけど、そこは雰囲気に呑まれて口を閉じた。

「何だ?」

キョウはつまらなそうに、執事に目をやった。

「緊急事態です。
 取り急ぎ魔界にお帰り下さい」

すう、と、キョウの体温が下がっていくのを感じた。

「よほどの緊急事態なんだろうな」

「それが、マリア様がいらっしゃって」

執事は言いづらそうだ。
綺麗な顔に似合わない、脂汗なんて浮かべているんだもん。



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