シンデレラLOVERS
元カノと一ヶ月カノジョ

この間、寄り道をしてクリスマスのイルミネーションを見に行った日から。
俺と日菜琉の関係にちょっとした変化が見え始めていた。



ていうか、変わったのは俺なんだと思う。



「……ごちそーさま」


「お粗末様です」



とりあえず、弁当箱を返すときには一言添えるようになった。


残り時間を一週間にしてやっとって感じだけど。


でも、受け取る時の日菜琉の嬉しそうな笑顔を見たら、こういうのも悪くないなって思える。



そして、もう一個の変化。


「サッカー部がんばってるね」


「試合前らしいしな」


俺の申し出で待ち合わせ場所が門の外から靴箱に変わったこと。


寒空の中を三十分も待たせてしまったことを、俺なりに反省した決意表明のつもり。


日菜琉と並んで運動場を横切っていく。
一緒に歩くのが恥ずかしいって感情は、イルミネーションを見に行った日からなくなっていた。


「善雅くんは部活しないの?」


「めんどいし。日菜琉は?」


「わたし? わたしは……タイミング逃しちゃって」


そしてどちらからともなく、気がついたら名前で呼び合っていた。


穏やかな会話に優しい表情。

そんなモノに自分の心が心地良さを感じるなんて初めて知った。


サッカー部のことなんて全然知らないけど、他愛ない会話のキッカケになってくれてることに感謝したいような気持ちだ。


初めは適当にさっさと一ヶ月が過ぎればいいって思ってたけど……今は円満に終わればいいなんて思ってる。



この時の俺のささやかな期待は、意外な方向で裏切られることになるのだった。

< 49 / 115 >

この作品をシェア

pagetop