やわらかな檻
白夜


 夜の花が咲いていた。



 彼女が子供だった時に誰もが認めていた可愛らしさは、女性に近付き大人びた、けれども少女らしさが抜けきらない微妙な年頃の色香へと変わっている。


 奇妙にも思えていた庇護欲はそのままに、赤く塗られた唇が凛とした雰囲気を醸し出していた。

 口紅と髪を結ぶ白い紐と、背中の半ばまで伸びた黒髪が危ういアンバランスさを保っていて。


 遠い昔に会ったきりの彼女――小夜は薄く桃色を溶かしたようなドレスを身に纏い、装飾は左足首の華奢なアンクレット一つのみだった。
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