ブエノスアイレスに咲く花
雨のない梅雨、味のないガム

あの日、学食を出るときに
僕たちは連絡先を交換した。

梅雨明けを発表しないのは
気象庁の意地としか思えないほど、
もう何日も夏日が続いていた。


僕はエアコンの効いた自宅からの外出を怠り、
サキともあの日以来会う気がおきなかった。

月末に夏休みが取れるので
どこか旅行に行こうという提案にも、
僕はきちんと返事をしていないままだった。


前期最後のテストの日、
北校舎2階のトイレで1週間ぶりに相沢に会った。

「覇気がないね、
 うちの姉貴のすっぴんみたいだ」

そう言われて洗面の鏡を見ると、
確かに少し頬がこけたようにも見えた。

夏が苦手な僕は毎年この時期になると体重が減る。
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