赤いエスプレッソをのせて
もうすでにオレンジ色の空




「動かないで」

と言われたのは、これでもう何度目だろうか。

鳥が飛んできたように見えたから、窓の外へ目を向けようとして、かなりの回数注意されたはずだ。

キャンバスへ真剣な眼差しを向け、時々私を観察し、世話しなく、けれどなめらかに手を走らせる彼、山久尚司は今、私の絵を描いてくれているんだ。

ああ――少し前のことを話さないと。

私はそう、くだんの通り魔に刺されてしまったんだ。

それからほとんど間を置かず――というか犯人がショーと出くわすほどのタイミングで――彼が到着したんだ。

それからすぐに救急車が呼ばれ、病院へ搬送された、と。

まあ、私を助けたショー自身、雨に濡れたせいでまたとんでもなく熱が上がってしまい、ニ、三日病院内で寝込んだそうだ。

私は一日ほど昏睡状態に入っていて、結局は、目が覚めたのは彼よりも数時間ばかし遅かった。
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