へなちょこリリーの惚れ薬
ラウネル南の森
「着かないじゃん!! ほんとにこっちでいいの?」
「わかんないよ、迷子になってたどり着いたんだから」

朝早く家を出たのに、もう日が暮れかけている。

「あたしたち、方向オンチみたいだねトレニア」
「これだけ迷ってたら、そろそろたどり着いてもよさそうなモンなのに」
「お腹空いたね……」
「でも、このミートパイは食べられないしね……」

よく考えたら、自分達で食べる気がしないほどマズいパイとジュースをプレゼントをしようというのだから、これは策というより無策な気がする。



日が落ちて、コウモリが鳴き始めている。


「ちょっと寒いね」
「帰れ……る……かな?」

あたしは、トレニアに上着を貸してあげると、森の間から空を見上げた。

星の位置からして、村からだいぶ北にいるようだ。



(おかしいな……。南に進んでたはずなのに)
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