公爵の娘と墓守りの青年
五章 旅の占い師の少女

「――カイ! ちょっと見てくれよ!」

明るい、嬉しそうな声が聞こえる。

(誰……? それに、ここは?)

聞き覚えのあるような男の声にリフィーアは首を傾げ、辺りを見回す。
目の前は暗闇で、自分の身体しか見えない。

「可愛い子だね。顔はお母さん似かな?」

再び、声が降ってきた。
こちらはいつも遊びに行っているカエティスの都の墓地の墓守り、カイの声だ。

「おいおい! じっくり見てくれよ。ほら、目元がお父さんそっくりだろ?! 笑うとお父さんそっくりだし、可愛いんだよ!」

「あはは、そんなムキにならなくても。ちゃんと君に似てることも分かってるよ」

強く力説する男の言葉に、カイは笑った。

(誰のことを言ってるんだろう……?)

声しか聞こえないリフィーアは眉を寄せて、耳を傾ける。

「カイも結婚して、子供が出来たら分かるよ、このムキになる気持ち!」

「うーん……結婚、ねぇ……」

静かに、少しだけ悲しげな声でカイは唸った。

「……まず、相手が近くにいないんだよねぇー。だから、まだ無理だねー」

いつものように明るい声で笑い、カイは言った。

「た、確かにそうだけど……」

困った声で、今度は男が唸った。
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