狂者の正しい愛し方



「晴姫(はるき)、どこへ行くんだ?」



佐薙(さなぎ)さんの膝の上で雑誌を読んでいた私は、ふいにそこをすり抜け、玄関へと歩いて行った。

すかさず佐薙さんが、座ったまま、なんと私の足首を掴んで制止する。


危うくつんのめりそうになったのをなんとか堪えて、私は首だけを後ろに向けた。

雑誌も放っぽって、真剣そのものの顔付きで私を見上げる佐薙さん。

私より年上の筈なのに、なんだかその姿は幼く見えた。


「なんで足首掴むのさ、危ないでしょ」と怒る権利があるだろうけど、私はまずそれをしない。

ニコッと笑って、佐薙さんにこう告げた。



「ちょっとそこまで、散歩してきますね。」



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