戦国遊戯
けじめ

一片の華

ぐっすりと眠る政宗の頭をひざからおろし、起こさないように、掛け布団をかけた。

「…2人とも、ありがとう」

玲子はそう言うと、部屋を出た。

「おや、どこへいかれるんです。外は大雨ですよ」

宿の女将に言われて、外を見た。大粒の雨が、絶間なく降り注いでいた。

「うわぁ…ほんとだ」

「退屈でしょうけど、今日は宿でゆっくりとしてたほうがいいですよ」

苦笑いを浮かべる女将に、玲子は首をふった。

「そうしたいけど、ちょっと行かなきゃ行けないところがあるんで」

そう言って、宿の外に一歩踏み出した。地面は雨でぬかるんでいて、あちこちに大きな水溜りもできていた。玲子ははぁ、とため息をついた。

「あ、ちょっとお客さん!濡れるよ!」

女将が止めるのも聞かず、玲子はそのまま城へと走っていった。


城門の前についたときには、寒さで唇がうっすらと紫色になっていた。

「おい!こんなところで何をしている!」

門番の1人が玲子に近づいてきた。玲子は少し震えながらも、門番ににっこりと微笑んだ。

「雨に降られちゃって。少しの間、ここで雨宿りさせてもらえませんか?」

上目遣いに、玲子が門番にお願いをする。門番は慌てて顔を横へと向けた。

「こ、この雨では仕方がないな。おとなしくしているというのであれば、よいぞ」

コホンと咳払いをひとつする門番に、玲子は飛びっきりの笑顔で、ありがとうと微笑んだ。
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