粉雪
消息
今にして思えば、あれほど母親を嫌っていたはずなのにあたしが“お金を出す”と言えたのは、

そこに“親子の情”が存在していたからなんじゃないかと思う。


結局あたしは、母親を憎みきれなかった。


隠れて連帯保証人にされていたとしても、昔のあたしに向ける笑顔を覚えているから。


それでも18までは、育ててもらったから。



お父さんの連絡先は、今も知らない。


誰と浮気して、どこに逃げたのか。


離婚した頃のあたしは、まだ小さすぎたんだ。



お父さんが居たら、何かが変わってた?


あたしは貧乏でも幸せに過ごしていて、

そしたら隼人と出会うこともなかったかもしれないね。


出会わなければ、愛し合わなければあんなことにはならなかった。


この人生が良かったのか悪かったのかは、未だにわからないよ。





それから隼人は、あたしの前で、母親の話をしなくなった。


だからあたしは、母親に他に借金があるのかも、

どこに居て誰と暮らしてるのかも知らない。


それでもあたしは無事に過ごしていたから。


“もぉ大丈夫”なんだって思ってた。


だって、あたしのバイト先は、高校の頃から変わってない。


誰かが探そうと思えば、簡単に見つかる所だから。




それから2ヶ月ほど経ったある日。


いつものようにバイトを終え、携帯を開いた。



不在着信1件:隼人



何だろう?


何故かこの時、嫌な予感ばかりに支配されて。


急いで通話ボタンを押した。



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