粉雪
―――その日も、前日からの雨が降り続いていて、

逃げるように街を出るあたし達にはピッタリだった。


右手でバッグを持ち、左手には真っ赤な傘。


昔、隼人に怒られて買った傘を、未だに持ち続けてた。


思えば、やっぱり出会ったあの日から、

あたし達の運命は、決まっていたんだろうね。


傘なんて、差さなきゃ良かったんだ。




『…出発だな。
どっか、寄るトコある?』


乗ったのは、あたしの車。


隼人の車はなくなっていた。


多分、処分したのだろう。



「…ファミレス寄ってくれる?
マネージャーには、最後くらい挨拶しときたいから。」


『…だな。
世話になったしな。
俺が代わりに挨拶したいくらいだけど、これからさらうヤツに言われたくないだろうし。』


隼人は、いつもみいたいに困ったように笑っていて。


本当にただ、思い付いただけだった。


でも今思えば、きっと何かに導かれていたのかもしれないね。



隼人はあたしのこと、恨んでる?


いっそ、恨んでくれたら良いのにね。


隼人は優しいから、

“ちーちゃんの所為じゃないよ”って、笑ってくれるんだろうね。


あの笑顔、もぉ一度だけでも見たかったよ。



この時既に、カウントダウンは始まっていた。


違うね…


出会った日から、あたし達の“終焉”へのカウントダウンは、

既に始まっていたんだ―――…




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