Symphony V
Allegro attacca

ハ短調 3/4拍子

稜夜のいなくなったその場所に、唯のバッグが残されていた。レオンはそれを手に取ると、唯に渡した。

「……とりあえず、ここを出ないか」

唯の表情を見て、何か言いたげなのに気づいたレオンは、ひとつ息をつくと、迷路を先へと進んでいった。唯も黙って、レオンの後に続いた。


月が高くのぼり、空一面にちりばめられた星々。
自然のプラネタリウムには、雲ひとつ無い。
虫の鳴く声が田んぼから聞こえてきた。

さぁっと風が吹く。
夏だというのに、いつものような蒸し暑さは無く、心地のいい夜だった。

「…稜夜と知り合ったのは、ちょうど5年前。俺が今の唯くらいの年の頃だった」

レオンがポツリと話し始めた。唯は黙って耳を傾けた。
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