拝啓 隣にいない君へ(短編)
僕から君へ
 いつまでも一緒に居たいと思っていた。良い年した大人なのに、幻想なんかじゃなくて本気でそう思っていた。他人から見れば、ガキみたいだと思われるのかもしれない。だけど君は、僕にとってそれ程の存在だったのだ。

 ずっと続けば良いのにと思っていた時間は、突如歩みをやめた。それは他の誰でもなく、自分のせいで。



「――誰よあの女!何で腕組んで歩いちゃってるのよ!?」

「……うるさいな、お前に飽きたんだよ。それくらい察しろ。」



 あんなの、口から出任せだった。あれは一時の気の迷いだったというか、何というか。女に迫られたけど、結局は何もなかったのだ。なのに僕は、最低なことを言って君を傷付けた。君が僕から離れる訳がないなんて、自惚れていた。



「永時(えいじ)なんか大っ嫌い!もう別れる!!」

「……はぁ!?」



 ああ言われたのは、当然の反応だった。冷静になった今ではそう思う。泣き出しそうな瞳で部屋を飛び出していく君を引き止めることもできず、僕はただ、その背中を見送った。

 君なら「冗談でしょ?からかってるんだよね?」って返してくれると思っていた。そんなこと……ある筈がないのに。
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