先生の青
Color.9 壊れる二人




来た道を戻る


走る車の窓からは
きれいな きれいな
夕暮れの空


オレンジ色の光は
あたたかい感じがして
胸を切なくさせた



口数の少ない私に


「疲れただろう?
眠っていいよ」


オーディオのボリュームを下げて先生は言った


「………うん。
じゃ、おやすみなさい」


シートの背もたれに
身体を深く預けて
目を閉じると



ひざの上に置いた私の手に
先生が手をそっと重ねた



強く握ったりしないで
軽く指を絡めて


先生の手のぬくもりを感じると
胸はギュッと甘くときめく



朝、病院に向かう道で
私は思った


帰り道、
今と変わらず
先生を好きだと思えるか?



………好きだった


フミさんを見ても
先生の本音を聞いても
カナさんと話しても



先生が好きだった



胸が痛むたび

どんな時よりも今

今が一番

先生が好きだと感じる




好きになればなるほど


胸は苦しく痛むんだ……





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