六人に届いた手紙
第三話 悪趣味なイタズラ
 宴会場に再び六人が揃ったが、誰も料理に手をつけようとはしなかった。
 お通夜の様な雰囲気で、沈黙を破ったのは亜紀だった。


「幽霊って居るのかなぁ」


「優子の旦那さんの信太さんと、息子の翔君が海で加奈を見たんだって」


 亜紀のひとり言の様なつぶやきに、そう答えたのは幸子だった。
 すかさず朋子は優子に視線を向けて勢いよく訊く。


「優子本当なの? 本当に見たの? 加奈の幽霊だったの?」


「えっ、いや私だけ見てないし、それに信太と翔の見間違いかもしれないじゃない?」


 なるべく朋子を安心させる様に言ったのだが、恵子が余計な事を言った。


「私、小さい頃おじいちゃんの幽霊見た事あるよ。お盆の時だから、きっと帰ってきたんだよねぇ」


 恵子の一言で、朋子は正気を失った様にぶつぶつと「幽霊は居るんだ」と言いながら、ガタガタと震え出してしまった。
 こんなにも朋子は怖い話しが苦手だっただろうか? 昔から怖いもの知らずで、みんなで肝試しに行った時でさえ朋子は先頭に立っていたはずだ。


「朋子〜幽霊って言っても、加奈の幽霊なら怖くないよぉ。久しぶり〜って普通に話しかけてきそうじゃん」


 沙也加が相変わらずのんびりした口調で言った。


「幽霊の話しなんてもうしないで!」


 朋子が金切り声を上げた。

 優子は、朋子の怯え様があまりにも激しいので楽しい話題を振った。察してくれたのか幸子も楽しい話しに乗ってくれて、少し時間が経った頃には皆で笑って料理にも手をつけ始めていた。

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