(短編)フォンダンショコラ
もう一度、君と
「ちょっと散らかってるけど・・・、外よりかはマシだからさ。入って。」

隼人はそう言って、6畳ほどの部屋に入っていった。

「今、暖房つけるな。」

私は小さく、お邪魔します、といって、靴を脱いで足を踏み入れる。

隼人は大学から二駅ほどの街で降り立った。そして駅から程近い大学が持っているアパートに、私を連れてきてくれた。

どうやら今は、ここで暮らしているらしい。

中まで入ると、そんなに狭くもない。

玄関横に小さな洗面台とキッチンがあって、その先にダイニング兼リビングが広がっている。窓の横にベッドが置いてあって、部屋の真ん中にローテーブル。そしてテーブルの横に、テレビやパソコンやコンポなどのオーディオ機器が並んでいた。

男の人だからか、部屋の中は殺風景だ。


「ソファーとかねえんだよな。ごめん、ベッドの上座っていいからさ。」

隼人はジャケットを脱いで、ヤカンに水を入れて火にかけた。その後ろ姿を見ながら、私はベッドに怖ず怖ずと座った。


数分して、隼人がマグカップを二つ持ってやってきた。ローテーブルにそれを置くと、隼人もベッドに腰掛けた。少しだけ開けた距離が、何となく寂しい。

「ミルクティー、好きだったろ?」

「・・覚えててくれたんだね。」

「まーな。飲めよ、体あったまるからさ。」


有り難く、隼人が入れてくれたミルクティーに口をつける。牛乳だけの優しい甘さが喉に広がって、一瞬体の中心を温めた。

しばらく、二人してずっと、ミルクティーを飲み続けていた。沈黙が気まずくなくて、むしろ心地好くて、ずっとこうしていたいとさえ思った。


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