フェイクハント
三・更なる被害者
 涼と典子が庭に出ると、屋敷の反対側から、もう一度女性らしき悲鳴が聞こえたので、屋敷を半周する形で走って向かった。

 すると、そこには、屋敷の裏口の壁にもたれるようにして、遥が座っていた。遥は目をカッと見開いたまま、明らかに死んでいたのである。そして座っている遥の横には例の「フェイクハント」の仮面が落ちていて、遥の前には海人、秀樹が立ち尽くしており、雪絵はその後ろでしゃがみ込み、嗚咽を漏らしながら手で顔を覆っていた。


「ここにまでチェスターが現れたっていうのかよ!」


 秀樹が、視線を遥から逸らしながら怒鳴り声を上げると、海人は黙って携帯電話で警察に電話をし、応援を呼んでいるようだった。涼と典子も愕然とし、すぐに遥から視線を逸らすと、雪絵の隣りに行き、身を寄せ合うようにした。


 しばらく経つと、たくさんのパトカーのサイレンが聞こえ、その音を聞いた海人はガレージに走って行った。そして一台のパトカーからは篠田が降りてくると同時に、真っ先に海人に声をかけた。


「大変だったな……お通夜にまでもう一人被害者が出るなんて」


「ええ……。篠田さんこっちです」


 海人が篠田を連れ、遥の殺されていた現場に向かった。

 そして立ち尽くしている秀樹や、身を寄せ合うようにしゃがんでいる雪絵と典子と涼を一瞥すると、海人は涼に云った。


「涼、みんなを連れて祭壇に戻っててくれ」


 涼が頷くのを見た海人は、篠田と捜査のことを話し始めた。
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